【推論】ロシアW杯で好調なロナウド選手がCL決勝で不調だった原因

現在ロシアで開催されているW杯。
日本代表の活躍によって、巷でも大きな話題になっていますが、ポルトガル代表のクリスティアーノ・ロナウド選手も6月26日現在4得点で、得点王と1点差など好調なプレイで話題になっています。
そんなロナウド選手ですが、5月26日に行われたチャンピオンズ・リーグ(CL)の決勝では、下記動画の4:08から始まる決定機でミスしてしまうなど本調子とは程遠いパフォーマンスでした。

しかしCL決勝の5月26日からわずか20日後のW杯開幕戦、6月15日のスペイン代表との試合では試合終了間際のFKを決め、ハットトリックにを達成するという離れ業を演じてみせました。

本稿ではロナウド選手がCL決勝で不調だった原因と、わずか20日間という短期間でコンディションを大幅に改善できた原因について、以下の流れで推論を進めていきます。

0.結論
1.動画からわかるCL決勝当日の左脚の異常
2.静止画から確認できる決勝当日の左脚の異常
3.左脚のどこに異常があったのか?
4.なぜCL決勝当日に左脚を怪我してしまったのか?
5.なぜW杯では好調なのか?
6.まとめ
7.想像力を膨らませると・・・


0.結論

しょっぱなからCL決勝でロナウド選手が本調子でなかった筆者なりの結論を書きます。

CL決勝当日、ロナウド選手は左脚に異常を抱えていた

以下では、このことについて動画や静止画を使って解説していきます。


1.動画からわかるCL決勝当日の左脚の異常

CL決勝当日に左脚に何かしらの異常があったと思われる動きをした瞬間の動画を2つ載せます。
まず練習中の様子です。

☆動画1

.https://www.youtube.com/watch?v=Uc8dqYUf4xIより

次に試合中の様子です。

☆動画2

https://video.liverpoolfc.com/より

練習中には左脚を地面に着いた直後にプレイを止めてしまい、試合中も左脚を地面についた直後、痛みのせいか踏ん張れずにケンケンしているのが分かると思います。

ちなみに、決勝前日は全く問題なく動いていることが確認できます。

☆動画3

☆動画4

共にhttps://www.youtube.com/watch?v=0AblYT3RPVYより


2.静止画から確認できる決勝当日の左脚の異常

静止画で確認しても、決勝当日は左脚に異常があったことが伺えます。
まずは単純に左脚一本で立った状態です。

○画像1(CL決勝時)

画像1はわずかではありますが、骨盤がロナウド選手から見て左に傾いています。
対して、6月25日のイラン戦では下記の画像2の様に、骨盤が真っ直ぐな状態で立てています。

○画像2(W杯イラン戦)

次に腰を落として、左脚一本で踏ん張っているシーンです。

○画像3(CL決勝時)

この画像3でも、画像1と同様に骨盤が左に傾いているのはわかると思います。
本来であれば、下の画像4(6月25日イラン戦での様子)の様に、骨盤を地面と平行に保った状態でないと、脚から地面に力が伝わらずDFとの競り合いに負けてしまいます。
しかも画像4では左右の肩の先(肩峰)を結んだラインも地面と平行なので、強大な力を地面に伝える事が出来ています。

○画像4(W杯イラン戦)

これらCL決勝当日の骨盤の傾きからは、「左脚一本で立った際に骨盤を地面と平行に保つための機能に何かしら異常があった」ことが伺えます。
筋肉で言うと左中臀筋と左腓骨筋、骨や地面との接地面から考えると左第5中足骨といったあたりに異常があったのではないかと考えられます。
もしかしたら、足の小指の指腹に水ぶくれがあったのかもしれません。
ただ、下記の画像5でも確認できるとおり、5月19日に行われたビジャレアル戦でもCL決勝と同じスパイクを履いているので、水ぶくれという可能性は高くないと考えます。

○画像5

従って、以後の考察では小指の水ぶくれ以外の異常に絞って話を進めていきます。


3.左脚のどこに異常があったのか?

これも最初に結論を述べてしまうと、「CL決勝当日、ロナウド選手は『腓骨筋』を痛めていた」と筆者は推測します。

「腓骨筋(右)」

もう一度CL決勝当日のロナウド選手の体の状態について整理します。

a.左脚で立った際に骨盤を地面と水平に保つことが難しかった
b.前日まではダッシュやサッカーの動きも、かなり強度が高い運動も問題無く行えていた

次に、CL決勝後のロナウド選手のプレイ状況について整理します。

c.CL決勝から12日後のアルジェリア代表との親善試合に出場し74分プレイした。
d.CL決勝から20日後のW杯の初戦でトップパフォーマンスを発揮した

条件a.からは、上述した様に、左の中臀筋と腓骨筋、または左第5中足骨に異常があったと考えられます。
条件b.c.d.から、骨盤の水平を保つメインの筋肉である左中臀筋に異常があった可能性は低くなります。
この時点で、左の腓骨筋と第5中足骨の異常に絞られます。
もし、左第5中足骨の異常であった場合、最悪のシナリオとして骨折が考えられるので、条件c.の様にわずか12日後にサッカーをプレイすることは難しくなります。よって左第5中足骨の異常の可能性は低くなります。
以上から、CL決勝時の左脚の異常は、比較的小さな筋肉である「左腓骨筋の負傷」だと筆者考えたのです。

更にロナウド選手の得意なプレイの1つに、「自身の右方向に素早く移動して、相手を振り切る」というプレイがあります。
6月25日のイラン戦でもこのプレイでPKを獲得したシーンがあったので、動画を貼っておきます。

☆動画5

https://www1.nhk.or.jp/sports/2018fifaworldcup/より

静止画で見るとこういった状態です。
※画像の撮影日は5月16日のビジャレアル戦です。

○画像7

この動きを実現するには、左の中臀筋や大臀筋による「左股関節の外転」がメインの動力になるのですが、左足の母指球で体を支える瞬間に「足関節の外反」方向への筋力発揮も必要になります。

「股関節の内外転(右)」

http://kokansetsu-itami.com/undougaku/2789/より

「足関節の内外反(右)」

http://muscle-guide.info/sokkan_2.htmlより

この「足関節の外反」をメインで行うのが、先ほどの腓骨筋なのです。
つまり、ロナウド選手の得意とするプレイが、不幸にもCL決勝当日の腓骨筋の負傷を招いていた可能性もあるのです。


4.なぜCL決勝当日に左脚を怪我してしまったのか

結論は「左足の腓骨筋の筋力が戻り切っていない状態で高強度な運動を行ってしまった」からだと考えます。

まず、決勝前日のロナウド選手の練習状況について確認していきます。
CL決勝を現地で解説した戸田和幸氏が講演会で指摘していたように、前日の練習でのロナウド選手はロンドから気合いにみなぎっていたそうです。
また、「前日練習で、何本シュートを打っても一向に足に当たらず、枠にも飛ばず」とのことなので、いつもより多く練習を行ったはずです。

次にロナウド選手がCL決勝に臨むまでのコンディションについて確認していきます。
ロナウド選手は5月6日のバルセロナ戦の前半15分に負った右足首の怪我の影響で、バルセロナ戦は前半45分のみの出場でした。

○画像6

また、実戦に復帰したのはバルセロナ戦から13日後の5月19日のビジャレアル戦でした。

CL決勝当日に異常があると思われるのは左脚ですが、この右足の怪我の治療期間に、ダッシュなどの両足で行う運動はできなくなります。
もちろん、シュート練習などもできない期間があったでしょう。
こうなると、右脚はもちろん左脚の筋肉、特に筋力トレーニングなどでは強化が難しい、腓骨筋などの足周りの小さな筋肉の力が低下していたことが考えられます。

もちろん前日の練習の様子や、5月19日のビジャレアル戦に60分出場していることから、ジムでの筋トレや、ランニング、ダッシュといった運動は問題なく行え、サッカーそのものもある程度の強度で行える段階まで回復していたと思われます。
レアル・マドリードほどのチームであれば、各種の筋力検査やダッシュのタイムを測定するなどしているはずですので、それらの検査で状態把握が容易なお尻や太腿、更にはふくらはぎといった比較的大きな筋肉には特段の異常は無かったと思われます。
しかし、ビジャレアル戦は開始11分で先制、更には32分にも追加点を奪い、2-0のリードを保った状態で62分に途中交代という展開だったので、試合中のプレイの強度はそれほど高くなかったと思われます。
つまりロナウド選手が強度の高いサッカーの動きを90分行ったのは、5月6日のバルセロナ戦の更に前、5月1日のバイエルン・ミュンヘン戦にまで遡らなければなりません。
前述したとおりCL決勝は5月26日だったので、凡そ1か月弱は頻回な高強度のサッカーの動きからは遠ざかっていたのです。
それに加えて、前述したように、練習とは言えCL決勝に備えて気合いが入った強度の高いサッカーの動きを、CL決勝前日という緊張感や興奮状態の中で行い、体の異常にも気が付きにくかったことが想像されます。
このわずかなブランクによる筋力の低下と精神状態の乱れによって、CL決勝当日に元々やや負傷のリスクが高かった左の腓骨筋を痛めてしまったと考えらるのです。


5.なぜW杯では好調なのか?

5月26日のCL決勝からW杯初戦の6月15日のスペイン戦までの20日間で、左腓骨筋のダメージが癒え、更にある程度の強度のサッカーを繰り返したことで、腓骨筋の筋力も回復してきたこと、加えて右足の負傷の治療期間に筋力トレーニングを行い、お尻や太ももといったサッカーをプレイする際にメインとなる筋力を維持できていたことが、W杯でのロナウド選手の好調さの主因だと思います。
「腓骨筋も鍛えておけばよかったんじゃないの?」という声が聞こえてきそうですが、もちろんチューブなどを使って腓骨筋を鍛える事はできますが、サッカーの激しい動きをする際に掛かる負荷を筋力トレーニングで再現することは非常に難しいです。
つまり、サッカーをプレイする際に必要な腓骨筋の筋力、特にトップ選手が行うようなプレイに耐えられるような腓骨筋を得るためには、サッカーをすることでしか得られないものがあると筆者は考えます。
また、負傷時のトレーニングでは、腓骨筋などよりももっと筋肉として大きく、運動する際にメインとなる臀筋やハムストリングといった下肢の筋力の維持向上、エアロバイクなどでの心肺機能の維持が優先されるべきだと思います。
また、ロナウド選手が怪我からの復帰まで2週間を要したにもかかわらず、わずか1か月足らずでトップ・パフォーマンスを発揮していることからも、そういったメインとなる筋力は維持するトレーニングを行っていた事は想像に難くありません。


6.まとめ

○CL決勝当日のロナウド選手は、前日までの練習の負荷が高過ぎたために左腓骨筋を痛めていた
○左腓骨筋の負傷のために、ロナウド選手はトップ・パフォーマンスを発揮できる状態ではなかった
○左腓骨筋の負傷が癒え、更には右足首の負傷期間にトレーニングを積めたことで、ロナウド選手はW杯ではトップ・パフォーマンスを発揮できている


7.想像力を膨らませると・・・

ここからは完全な筆者の想像です。
ロナウド選手は試合当日、もしくは試合の最中には自身の左脚の異常について把握していたと思います。
もちろん、出場を続けて活躍したいという思いもあったと思いますが、総合的に判断して出場を続けた方がチームにとってもリスクが低いと判断したと思われます。
この試合、レアル・マドリードは前半37分にダニエル・カルバハル選手が負傷退場していました。
加えて、後半の途中でイスコ選手を下げてガレス・ベイル選手を投入するという流れはシーズン終盤のレアル・マドリードの定石の手となっていました。
これに加えてロナウド選手も交代となると、交代枠3枠を全て使い切ってしまい、フィールド上の選手に何かアクシデントがあった場合、交代ができないという危機的状況に陥ってしまいます。
更には、前半30分に相手のリバプールの主力、モハメド・サラー選手が負傷退場したことで、それ以降、試合自体はレアル・マドリード有利な流れでした。
そこでロナウド選手は自らがトップ・パフォーマンスを発揮できない状態でも、勝利することができると計算し、多少無理をして出場を続行したと思われます。
今回、筆者が推測した負傷箇所である左腓骨筋についても、前述したとおり、ロナウド選手のプレイ・スタイルから、やや負傷のリスクが高い場所です。
従って、過去にも復帰後に数試合は左腓骨筋を痛めるなど、同様の負傷は何度か経験していた可能性もあります。
そこで、ロナウド選手は「この程度の負傷であれば、問題なく試合終了までは出場できる」と踏んだのかもしれません。

以上は筆者の完全は想像ですが、ペナルティ・エリア内での巧みな駆け引きでゴールを量産する現在のロナウド選手であれば、これくらい計算してプレイしていたとしてもおかしくはないと思います。

W杯では3試合目こそ得点がなかったものの、接触による負傷などが無い限り、決勝トーナメントでも圧巻のパフォーマンスを見せてくれるのではないでしょうか。
以上で本稿を締めくくりたいと思います。
長々とお付き合いいただきありがとうございました。

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【推論】ロシアW杯で好調なロナウド選手がCL決勝で不調だった原因」への1件のフィードバック

  1. ピンバック: 2018年6月29日 | 川崎市多摩区|えばと鍼灸マッサージ院

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