半月板の損傷で痛みは起きるのか!?

現在多くの整形外科などの治療院では膝の痛みの原因として「半月板損傷」が上げられています。
本記事では、「半月板損傷が膝痛の原因」説に疑問の声を投げかける論説をご紹介させて頂きます。

半月板の損傷と痛みの関係が乏しいとする研究

無症状の膝に対してMRI撮影を行ったところ、加齢とともに半月板の損傷が増えていたという報告があります。

半月板の変性は加齢とともに増加し、内側半月板の後節部で最も著明であった。
内側半月板の後節部では全体の18.3%、60歳以上では41.7%に断裂を示すgrade3を認めた。

「無症状膝のMRIにおける異常所見の発生頻度」J Orthop  Sci  掲載論文要旨    日整会誌76福田昇司  正木國弘 高麗文晶より

つまり、膝に痛みを抱えた方に対して半月板の損傷を確認できたとしても、痛みが起こる前から損傷があった可能性があり、損傷が膝の痛みの原因かどうかは判別がつかないことになります。

また、半月板の損傷に対して半月板部分切除術を行っても、偽の手術と差が無かったする論文もあります。

変性内側半月板断裂症状があり、変形性膝関節症ではない患者146人を対象に、関節鏡下半月板部分切除術の治療効果を無作為化試験で偽手術と比較。intention-to-treat解析で、Lysholmスコア、ウエスタンオンタリオ半月板評価ツール(WOMET)スコア、運動後膝痛の術後12カ月時の変化に有意な群間差はなかった。

半月板断裂手術、偽手術と差なし
文献:Raine S,et al.Arthroscopic Partial Meniscectomy versus Sham Surgery for a Degenerative Meniscal Tear.N Engl J Med 2013; 369:2515-2524.

この研究での偽手術では、下記のとおり、関節鏡を入れるための穴すら開けず、吸引器を押し当てる等の刺激しか与えなかったようです。

For the sham surgery, a standard arthroscopic partial meniscectomy was simulated. To mimic the sensations and sounds of a true arthroscopic partial meniscectomy, the surgeon asked for all instruments, manipulated the knee as if an arthroscopic partial meniscectomy was being performed, pushed a mechanized shaver (without the blade) firmly against the patella (outside the knee), and used suction. The patient was also kept in the operating room for the amount of time required to perform an actual arthroscopic partial meniscectomy.

偽手術では、標準的な関節鏡下半月板部分切除術がシミュレートされた。真の関節鏡下半月板切除術の感覚と音を模倣するため、術者はすべての器具を求め、関節鏡下半月板切除術が行われているように膝を操作し、機械化シェーバー(刃なし)を膝蓋骨(膝の前面の骨)にしっかりと押し当て、吸引を行った。また、実際の関節鏡下半月板切除術に必要な時間、患者さんを手術室でお預かりしました。

Arthroscopic Partial Meniscectomy versus Sham Surgery for a Degenerative Meniscal Tear

その他にも、半月板断裂に対して部分切除を行っても、理学療法と統計的な差が無かったとする研究もあります。

変形性関節症で半月板断裂の患者351人を対象に、関節鏡下半月板部分切除術と理学療法の治療効果を無作為化試験で比較。変形性関節症の評価尺度WOMAC身体機能スコアの平均改善度は、6カ月時で手術群20.9ポイント、理学療法群18.5ポイントと有意差はなかった。12カ月時の結果も同様で、有害事象の頻度も有意な群間差はなかった。

半月板断裂手術、理学療法と同等 2013年03月25日 NEJMoa1301408.

半月板の損傷を確認できてもそれが単に加齢によって生じた物なのか、そうでないのか不明となると、その損傷部分を手術で取り除いたとしても痛みがきれいさっぱりとはいかないのは当然と言えば当然の結果の様にも思います。

半月板の生理学

半月板は膝の円滑な運動を助ける働きをする軟骨組織なのですが、軟骨には血管や神経が乏しく、生理学的に考えても痛みは起こりにくい臓器だと考えられます。

軟骨(なんこつ)は、軟骨細胞とそれを取り囲む基質からなる支持器官であり、軟骨組織は血管、神経、リンパ管を欠く。

wiki「軟骨」より

半月板は通常の軟骨とは異なり、外側1/3には神経線維や受容体の存在が確認されていますが、痛みを伝達する物質サブスタンスPに反応する繊維はわずかなようです。

神経線維および受容体はやはり半月板の外側1/3の部分に存在しており、内側1/3の部分には認めなかった。(中略)substance-P染色においては染色された線維はわずかではあるが、血管の走行とともに半月板の外周縁に認められた。

半月板の神経支配の免疫組織学的観察 – KAKEN

そして、この半月板は膝の屈伸運動に伴って移動する仕組みになっています。もし半月板に痛みの受容器がたくさんあったら、曲げ伸ばす度に激痛かもしれません。
このように現在の半月板損傷を痛みの原因とする治療は、エビデンスが乏しく且つ生理学にも則っていない部分があります。
少なくとも損傷した半月板を取り除いて痛みが改善したとしても、その改善度合いは手術を受けなかった人や理学療法だけした人と統計的には差が確認できてない訳です。

膝痛が起こる要因

ではなぜ痛みが生じるかというと、私のわずかながら臨床経験からすると、筋肉のコリや皮膚のツッパリに原因だと思われます。

なので膝前面の痛みの場合は、お皿(膝蓋骨)周囲の筋肉、大腿四頭筋や前脛骨筋、縫工筋、ツボで言うと血海、梁丘、足三里、陰陵泉といったあたりを、膝後面の痛みの場合は、腓腹筋の付着部、ツボで言うと委中の周囲を指圧等で刺激すると良くなることがあります。

膝前面のツボ
膝後面のツボ・委中

上記の箇所を軽く押したりさすったりしてみてください。
半月板損傷以外にも腸脛靭帯炎(ランナー膝)や膝蓋腱炎(ジャンパー膝)、鵞足炎といったものでも、腫れや熱感が確認できない場合は、上記の部位を刺激することで痛みが改善することがあります。
※刺激する事で痛みが増す場合は、直ちに刺激を中止して下さい※

もちろん、そういった患部付近の刺激では効果が無い場合もあります。そういった場合は病院で診察を受け、骨などに問題が無い事をまず確認して下さい。
病院での治療を一通り受けた後、それでも痛みが引かない場合や治療に納得できない際は、鍼灸やマッサージを行っている治療院に行かれる事をお勧めします。
また、休息等で痛みが改善しても、運動を再開すると痛みが再燃してしまう場合、体の使い方や筋力、柔軟性などに問題がある事が考えられます。
当院ではそういった痛みに対してもトレーニング指導で対応しております。
ぜひ一度ご利用下さい。

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