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椎間板ヘルニアについて

脊柱管狭窄症や腰椎椎間板ヘルニア等の画像診断上の異常は、痛みやしびれの原因でないことがほとんどです。

まず「神経の圧迫」によって「痛みが生じる」ということが、生理学的に考えて大きな矛盾を抱えています。

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通常、神経の圧迫・絞扼によって生じる現象は「麻痺」のはずです。
上に示す橈骨神経麻痺による下垂手や、尺骨神経麻痺による鷲手、腓骨神経麻痺による下垂足がギプス固定の際に心配されるのは、神経を圧迫・絞扼し続けると、これらの「麻痺」症状を呈することがわかっているためです。

これらの「麻痺」は神経の圧迫によって、脳からの信号が効果器である筋肉に伝わらなくなるために生じる現象です。

少々乱暴ですが例えて言うなら、糸電話の糸が切れてしまっている状態です。
糸が切れてしまっていては、音の振動が相手のコップに伝わらず、相手に音を伝えることはできません。

「痛みが生じる(疼痛)」という現象は「麻痺」とは全く反対に、皮膚や筋肉に存在する受容器から痛みの信号が脳に送られる現象です。

糸電話で言うと、相手に声が伝わっている状態です。
しかも大きな声(痛み刺激)を入れれば入れるほど、受け取る側(脳)にも大きな刺激が伝わります。「ヘルニアによって痛みが生じる」という説明は、本来「麻痺」症状を呈するはずの病態(神経の圧迫)に対して、起こるはずのない「痛み」という全く反対の現象をつなげてしまうという、生理学的に考えて全くもって摩訶不思議なものなのです。

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参考サイト
「圧迫性神経障害の症状は「麻痺」か「痛み」か?」 – CHIRO-JOURNAL
http://www.chiro-journal.com/column/itami/no20.html

こちらの加茂淳先生というお医者様は、今までの教育で教えられてきた間違った考えを正そうと腐心されています。

心療整形外科(加茂先生のブログ)
junk2004.exblog.jp
2011年 06月 13日
医師は手術をしたくなるが、これは痛みの原因ではない
http://junk2004.exblog.jp/15752556/

引用開始

スミスチのームは腰痛患者を対象としたX線やMRI検査も問題視している。

腰痛には無関係な異常を見つけるだけに終わることが多いためだ。

40歳以上の成人の8割には、腰の部分に膨らみなどの変形が見られる。

医師は手術をしたくなるが、これは痛みの原因ではない。

こうした「異常」がCTやMRIに現れても、腰痛と結び付けることにはほとんど意味がない。

大半の腰痛は筋肉の緊張などによるものだから、画像では原因は分からない。たとえ手術をしても、その効果は市販薬や運動や体を休めることとほとんど変わらず、手術だけは大きな危険を伴う。

腰の部分に膨らみなどの変形が見られる=ヘルニアのこと

痛みやしびれのX線、MRI、CTなどの画像診断は、悪性腫瘍、感染症、骨折など明らかな外傷、リウマチおよびリウマチ類似の炎症性疾患の検査の意味しかありません。

引用終了

医学文献にもヘルニアの有無と痛みが相関しないことが報告されています。

正常人における腰椎MRIの異常所見の頻度
http://www.tvk.ne.jp/~junkamo/new_page_10.htm
引用開始

腰椎のMRI検査で時折見つかる“異常”所見が、どの程度の臨床的意味を持つか明らかではない。この研究では、腰痛の既往がない20~80歳の成人98人を対象に腰椎MRIを施行し、高率に異常所見が見つかったと報告している。
腰椎MRlで全椎間板の5椎間に椎間板ヘルニアがあるかどうか、以下の所見を基に観察した。椎間板膨隆、対称性に椎間板が脊椎管内に膨れている。椎間板突出、局所的に非対称性に椎間板が膨れてる。椎間板脱出、さらに高度に椎間板が突出している。診断する放射線科医の予断を減らすため、これら98例のMRIに腰椎患者の異常所見のあるMRIを交ぜ合わせた。

その結果、98人中52%に少なくとも1椎間以上の椎間板膨隆が見られ、27%に椎間板突出が、1%に椎間板脱出が見られた。加齢と共に椎聞板膨隆の頻度は増え、椎間板突出は活発な肉体活動を行っている人に多く見られた。2椎間以上の異常所見は38%に認められた。その他の異常所見として線維輪欠損14%、椎間関節炎8%、脊椎分離、および脊椎滑りがそれぞれ7%に見られた。
N Engl J Med 1994  Jul   14;331:69-73

引用終了
※太字強調は江波戸によるもの

神経の圧迫によって痛みを生じる病態が存在するのも事実です。
しかしそれは「異所性発火(興奮)」と言うもので、「神経の圧迫で痛みが生じる」と主張されている方の主な根拠がこれなのですが、この異所性発火が起こるには条件があります。
それは神経そのものが損傷・断裂しているということです。

神経そのものが損傷・断裂して生じる痛みを「神経障害性疼痛」と言うのですが、これは帯状疱疹後神経痛やRSD(反射性交感性ジストロフィー)、糖尿病性ニューロパチーなどで見られる「難治性疼痛」と言われる痛みです。

この状態になってしまうと鍼灸等の物理刺激で痛みを改善することはかなり困難です。
しかし実際にはヘルニアと診断された痛みでも、その場で改善することが多々あります。
これは痛みが上記の様な難治性疼痛ではなく、MPS(筋筋膜性疼痛)や脳の誤作動だったためと私は考えます。

整形外科や鍼灸院等に来る「ヘルニアによる腰痛患者」のほとんどが上記のような難治性疼痛とは思えません。

ヘルニアがその場で引っ込むとも考えづらいので、やはり筋肉の緊張やコリが改善して、痛みやシビレが改善したと考えた方が生理学的に正しいと思います。

どうか痛みやしびれで苦しんでいらっしゃる方々は、お医者様の言うことをそのまま信じないようお気を付け下さい。

もちろん私のような鍼灸師の言うことを100%信じる必要もありませんが。

(2011年6月17日ブログ掲載の記事を加筆修正の上、再掲)

冒頭画像はhttp://ogawa-seikotuin.com/pages/case/003313.htmlより