不妊治療について

鍼灸治療院で不妊治療を謳っているところが多いですが、不妊治療は腰痛や膝痛のようにその場で治療効果を判定することができないため、本当に鍼灸治療が不妊症に対して効果を上げているのかは鍼灸師自身にもよくわかっていないケースが多いです(と思います)。少なくとも私にはわかりませんでした。
医学論文も意見が分かれています。

「鍼治療が体外受精の治療成績を向上させるというエビデンス(証拠)はない」
http://www.akanbou.com/news/news.2010031101.html

鍼治療を採卵日に実施した試験、胚移植の日に実施した試験、また、胚移植の日と2、3日後に再度実施した試験でも、比較対照群に比べて、臨床妊娠率や出産率、流産率において顕著な違いは見られなかったとのこと。

「鍼治療で体外受精の成績が向上」
http://akanbou.com/news/news.2008020801.html

欧米4ヶ国で実施された1366名の女性を対象に、体外受精時の胚移植の前後に、伝統的な鍼治療を受けた女性のグループ、にせの鍼治療を受けた女性のグループ、そして、何も施されなかった女性のグループのその後の成績を比較したところ、伝統的な鍼治療を受けたグループは他のグループに比べて、妊娠した割合が65%、そして、出産に至った割合が2倍であることが分かりました。

中には偽の鍼を受けた方が成績が良かったなんて論文も。

「体外受精の胚移植日の鍼治療と治療成績の関係」
http://akanbou.com/news/news.2008111401.html

体外受精時の胚移植日に本物の鍼治療と偽の鍼治療を実施したところ、偽の鍼治療を受けたほうが妊娠率が高かったことが、香港で実施された二重盲検法による試験で明らかになりました。

ただ鍼灸やその他の物理療法が全く無効かというとそうではなく、上記論文にもあるとおり施術によってコリがほぐれ、身体が暖まったりリラックスできたりといった効果はあるので、そういった作用の副次的な効果として妊娠できるということはあるかと思います。

不妊治療、鍼灸これで良いの?! – 発言小町 – 読売新聞
http://komachi.yomiuri.co.jp/t/2010/1217/371972.htm?o=0

鍼灸は(私も通っていますが)リラックスできるので、効果はゼロとはいえませんが、いわば「プラセボ」です。「占い師の助言」と同程度だと思った方がいいです。

医師の下での不妊治療をやめたら、その途端に妊娠したなんてことも良く聞きます。
恐らく不妊治療によるストレスから解放されたことによって、妊娠できたのだと思います。

「眠れない」、「首が痛い」といった時には鍼灸治療でそういったストレスを除去することは可能ですので、体調に問題がある時は鍼灸は有効だと思います。

自覚症状(どこかがつらい)も、病因での検査でも夫婦ともに異常が無いという方は、効いているのか効いていないのかよくわからない治療を受けるより、まずは以下の3点を行ってみてください。

①.週2回×半年の性生活を行う
②.新鮮な精子を生産するためにも、どんどん出す
③.冷え持ちの女性は冷え対策を十分に行う

まず①ですが、精子は女性の体内でも2・3日は生存可能です。
中3日でセックスすれば常に精子が排卵を待ち受けることができます。

何故常に排卵を待ち受ける必要があるのかと言うと、wiki「排卵」にもあるとおり「生体内の様々な条件によって女性の月経周期は容易に変化しうるため、月経開始日から排卵期までの実際の日数を事前予測するには、もろもろの不確定要素を含む」からです。

つまり「予定日」はあくまで予定にしか過ぎないのです。

次に②です。
精子は量より質が重要です。
新鮮な精子を生産するためにも、どんどん出してください。
禁欲して何日も精子を貯めるのは新鮮でない精子を貯めこむことになります。

最後に③です。
足からの冷えは下腹部にある子宮や卵巣を冷やし、その活動を妨げてしまいます。
冷え持ちの女性は温かいズボン、毛糸の靴下・パンツを履く、腹巻をするなど、冷え対策を十分にしてください。
その際の生地も〇ニクロのヒー〇テックなどの化繊ではなく、絹やウール、綿など肌への負担が少ないのもをお勧めします。
身体の中で熱を産み出せるのは筋肉と肝臓だけなので、ウォーキングで毛細血管を拡張するだけでなく腹筋運動、スクワットといった筋トレも冷え対策に有効です。
筋トレの方法については、当院のロジカル・エクササイズでも指導させてもらっています。

以上3点を実行しても妊娠できない場合、専門の医療機関に相談の上、治療を受けることをお勧めします。

ちなみに排卵誘発剤と人工授精(IUI)は有効でないとする論文があります。

「誘発剤と人工授精「効果なし」 英の研究グループが報告」
http://blog.livedoor.jp/hanasyoubu2020_005/archives/51398071.html

研究チームは、2年以上原因不明の不妊に悩んでいる女性580人のうち、3分の1に排卵誘発剤のクエン酸クロミフェンを投与、3分の1に夫の精子を子宮へ入れる人工授精を6か月間実施、残り3分の1には治療を行わなかった。その結果、出産にこぎつけたのは誘発剤で14%、人工授精23%、無治療17%だった。これら三つの方法の差はわずかで、統計的には「効果なし」と判定された。

英国国立医療技術評価機構(NICE)の新ガイドラインにより40歳以上の女性への体外授精(IVF)の実施機会広がる~イギリスの不妊治療記事から~

子宮腔内受精(IUI)は定期的なセックスと比べても生児出生に差異がみられないことから、現在では推奨されていない。

上記のNICEの論文ではクエン酸クロミフェン以外の誘発剤も無効とあります。

ガイドラインでは、クロミフェンクエン酸塩、アナストロゾール、又はレトロゾールといった、卵巣を刺激する物質の提供に関する勧告は、それらの処方で出生率が情報(※上昇?)するエビデンスが認められないため、削除された。

IVF(体外受精)も3回目以降は7回以上行ってもそれほど妊娠率はアップしないという研究があります。

「不妊治療の辞め時は-体外受精のエビデンス」
http://azuki0405.exblog.jp/15139547/

5年間で約30万人の女性が50万サイクル以上の体外受精治療を受け、171,327分娩(全員が初産)の結果を得た。1回目の体外受精で36%が出産、2回で48%、3回で53%が出産に至った。
7回以上の体外受精を受けた女性たちの成功率は56%と、3回の治療を受けたグループよりかろうじて3%上回っただけであった。

また一般にはあまり知られていないことですが、医学的には20歳後半から妊娠率は低下し、35歳を過ぎると妊娠が難しくなると言われています。
しかし特に不妊に関する情報に接していない女性は、40歳まで妊娠できると楽観視している傾向があるようです。

「自然妊娠は41歳まで可能? 妊娠に対する女性の楽観的意見に専門医が警鐘」
http://news.ameba.jp/20121002-127/

これはテレビ等で芸能人の高齢出産が報道されている影響かと思います。
有名人は体外受精や顕微授精、精子へのホルモン注射等の高額な治療費を支払った上での妊娠だと思われます。
我々の様な一般人には到底支払えない額のお金を支払っている可能性もあります。

30歳近くの方でお子さんを希望する方は、まだまだ大丈夫などと呑気に構えず、今日からでも具体的に行動していくべきです。

不妊治療で鍼灸院を受診される場合、過度の期待は禁物です。
むしろ治療そのものよりも、冷え対策や運動指導など日頃の生活習慣に対してアドバイスしてくれるところの方が良心的だと思います。

3年治療して妊娠したという症例報告もありますが、これに関して「3年治療が必要なほど重篤なものだったのだから治療のお陰」と考えるか、「治療とは関係無く、生殖医療による妊娠」と考えるか、はたまた「治療も生殖医療も妊娠には関係ない」考えるかはご自身でご判断下さい。
参考サイト:http://1gen.jp/1GEN/BENSYO/2506-A6.HTM